背中から暖をとる



暖冬って何?と圭太郎は思う。
朝から晩までずーっと寒い一日がここ一週間続いていた。寒さには慣れない。慣れるはずがない。
だからせめて暖を取ろうと人肌だったり暖房器具だったりを探すのだけれど、どれもいまいちうんともすんとも言わず。頼りの綱であった電気ストーブは今年はどうやら絶不調らしい。さきほどから部屋が暖まる気配がほとんどしていない。
まぁ、つけないよりはましだけど、と圭太郎は思う。

今日はテスト勉強をするために圭太郎の部屋に来た幸輔。
けれど、こんな気温じゃ勉強がはかどるはずもなく。
それでも幸輔は文句一つ言わずノートと教科書をにらめっこ。
テーブルの向かいに座っている部屋の主の圭太郎といえば・・・やはり寒さに耐え切れず勉強に手がついていないようだった。

「・・・タロウ」

そんな圭太郎の様子が気になって幸輔が声をかける。

「・・・ん?」
「寒くないの・・・?」

幸輔が答えの分かりきった質問を問いかけてきた。
ジット〜、と幸輔を見ながら、それでも圭太郎は答える。

「・・・さみーよ」

圭太郎のその答えに、幸輔は、キョト、と少し驚いた顔をした。
「・・・寒くなんかねーよ」という答えを予想していたため、あまりの素直な反応(言い方は可愛くないが)にそのあと思わず、プッ、と笑みをこぼしてしまった。
そんな様子の幸輔に、もちろん圭太郎は面白くない。けれどだからといって「あっためろ」なんて口が裂けても言えないから圭太郎は寒さにじっと耐えているんだけれど

さすがにもう、限界。

そんな圭太郎の気持ちを読み取ったかのように、優しく笑った幸輔が立ち上がり圭太郎の背後へと移動して、圭太郎が壁に背を預けているところに無理矢理入り込もうとする。
当然、圭太郎は「?」と疑問符を浮かべる。

「はいはい、どいてどいて」
「・・・なに?」

眉を寄せて幸輔を睨みつけてみるが結局は立ち上がって幸輔を招き入れる。
幸輔は腰を下ろすと、おいでおいで、をして、ニコ、と笑っている。

「はい、どうぞ」
「・・・は?」

さらに眉を寄せる圭太郎。
幸輔の行動の意味が分からない。


「ここ座って。俺が後ろから抱きしめればあったかいでしょ?」



「・・・バカじゃねーの?」

思いがけない幸輔の提案に少し赤くなったであろうホホを見られないようにするために幸輔から顔を背けるのだけれど
嬉しい反面、自分の胸のうちを読まれたみたいで圭太郎は気に食わない。


でもやっぱり、人肌が、幸輔の体温が欲しくて、寂しくなってしまう。



「・・・結局座るんじゃん」

テーブルと幸輔の体の狭い隙間にすっぽりと納まる圭太郎の体。
背中には幸輔の暖かい体温。

「・・・うっせーよっ」

口では意地を張りつつも、これで勉強もはかどると良いんだけどな、と圭太郎はこっそり微笑んだ。



end




ゴメンナサイゴメンナサイ。

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